各かもくの終了後、せんせい+こどもたち+おたすけびと(エメ スズキ)で、質問をやりとりしたり、インタビューを行いました。その一部をご紹介!
しつもんとおへんじ
こども「おんがくをつくりかえたりすることはありますか?」
マキコせんせい「そんなにいつもはね、おんがく、つくってないのよ、わたしたち」
マキせんせい「でも、この音が、この音にきこえるね、みたいなのは、よくあって、さっきの音で「走りだせ」みたいにきこえるねっていう、そんなかんじのことは、よくはなしてるかな」
マキコせんせい「「おんがく」っていうと、あまりとくいじゃないんだけど、今の音、おもしろいとか、この音とこの音、合わさったらおもしろい、みたいなことは、けっこうしゃべってるかもしれない」
マキせんせい「うんうん」
マキコせんせい「そうきっと、あんまりみんなとかわんないかな?」
おたすけびと(エメ スズキ)⇒せんせいに質問の様子
おんがくレポート1 岩淵 拓郎
岩淵 拓郎
マキコムズが手がけた「おんがく」は、ワークショップユニットとしての彼らの経験が端々から感じられる、とてもよく設計されたワークショップだった。音楽の流れを物理的な距離に置き換えて工作的に組み上げていくワークはもちろんのこと、それ自体が新しい遊びを想起させるようなマットや材料の並べ方、デモを中心とした簡潔で明快な導入、材料の固定をマステ一択にするところまで、いたるところに豊富な経験が活かされていると感じた。だからこそ子どもたちは、迷うことなく自主的に、それぞれのペースで、アイディアをカタチにすることに向き合えたのだと思う。やっぱりワークショップにおいて設計はとても大事だ。
そんな中、とりわけ印象的だったのは、マキコムズの2人が子どもたちに向けて何度も口にした「それいい音!」と「何度も試して!」という2つのメッセージだ。「それいい音!」は、アーティスト自身が子どもたちの音に耳を傾けているというメッセージだ。その言葉が発せられるたびに今が「おんがく」の時間だということを思い出し、目から耳に意識が移った。そして「何度も試して!」は、とにかく頭だけで考えず、手を動かして、失敗を重ねて、自分だけのクリエーションを見つけて楽しもうというメッセージだ。当たり前のことかもしれないけれど、スムーズな進行を気にかけるあまりその当たり前が二の次にされてしまうワークショップは実は少なくない。
唯一気になった点は、それぞれの発表のとき、自分の作ったものが気になって他の参加者の作品の音に集中できていなかった子どもがいたこと。それをお作法的に抑えつけるのではなく、自然と他の人の作った音にも耳が向くようなかたちが作られればいいなと感じた。
岩淵 拓郎(編集者)
1973年兵庫県宝塚市生まれ/在住。美術家を経てフリーの編集者に。主にアート関連の書籍・冊子の編集、文化プロジェクトの企画・制作など。2014年に子どものためのアートワークショッププログラム「なんだこれ?!サークル」を発案し、国内外で実施。
おんがくレポート2 オサム
おんがく
オサム
シーンとした部屋が作業を開始したら迫力のある音がドンドン!聞こえ始めるのが凄く良くて、その瞬間本当に来てよかったと思いました!
奏でられる音も個々皆にあるテーマや制作秘話が聞けてとっても良かった、もっと聞きたいくらいでした。
終わり方だけ時間の関係?で結構急ぎ足だったのでそこだけが残念でした、もう少し時間があればまだ何人か何かやりたげな子がいたのでやり切れたのでは…と、是非次やるならフリータイムが欲しいな~と思いました!
オサム(中学生)
映画鑑賞と漫画描くのが好きで、大きい音と人込みが苦手。感情を文字に出力するのが超~苦手、しかし頑張ります。頑張ります。
おんがくレポート3 弘田 陽介
おんがく
弘田 陽介
音を書く。時間を記録する。時間を留める。
「時よ留まれ、お前は美しい」と言ったのはゲーテだが、
音楽は時を止めずに記録する。
しかし子どもたちは、音を出すためのピタゴラ装置作りに熱心で
音を出すということを忘れがち。
しかし、いざその装置が出来上がり、音を出すことを始めると
急に手の人から耳の人になる。
全身を耳にして、みんなでかすかな音を聴いている。
トン カン トン 金属同士の接触音。
ストン うまくボウルに玉が収まった音。
おーっと歓声があがる。
「ここで気持ちが上がって、下がって」と記譜を見ながら、熱心に説明する子ども。
パチンコ玉は、気持ちの上がり下がりなんだ。
スムーズに玉が流れる接触音の間。ここは楽譜にならない。
しかしここが耳を澄ます時間
音楽を作り出すっていうよりは、
聞こえ方を変えてみる
出し方ではなく、味わい方。
どんなものにも気持ちが入り込んでいる。
その気持ちは自分のものなのか、一緒に楽しんだお友達のものなのか、
それとも誰のものでもないものなのか。
おんがくって、いいよね。
聴いてるときは、自分もお友達も先生もいない。
音だけがある。
弘田 陽介(大学教授)
福山市立大学教育学部教授。専門はドイツ教育思想、実践的身体教育論、子どもと保育のメディア論。著書に『近代の擬態/擬態の近代 カントというテクスト・身体・人間』(東京大学出版会)、『いま、子育てどうする?;感染症・災害・AI時代を親子で生き抜くヒント集35』(彩流社)等がある。